■限りなく“バス”に近い乗り物!?
JR奥行臼駅跡と上風蓮線の同名停留所ともに、遺構が整備されて観光スポットになっている。現地へ訪れると、JRの駅跡もそうだが、見慣れない簡易軌道車両の姿が新鮮に映る。
屋外展示されているのは、当時の詰所と転車台の跡に加え、貨物用の小型機関車と牛乳運搬用の貨車、旅客専用車が1両だ。
旅客専用車は「自走客車」と呼ばれていた。重量8トン、定員60名と小柄なスタイルで、スペック的に見ると今日の中型路線バス車両に通ずるものを感じる。
2400cc 155馬力の日野製ディーゼルエンジンを1台床下に積んでおり、このエンジンもバス・トラック用が使われている。
広義で言えば、乗合の交通機関ならすべてバス(オムニバス)の一種になるが、中でもこれは限りなくゴムタイヤで走るバスに近い性格の持ち主と言えそうだ。
ちなみに自走客車の製造は1963(昭和38)年。香川県の地方私鉄・ことでんにて、元京浜急行で1959(昭和34)年に製造された車両が今も頑張っている。
簡易軌道が大昔に絶滅していることから、ひっそりと佇む自走客車が太古のオーパーツのように見えるものの、車齢的には何気にことでんの現役電車よりも若かったりするので、比べると時系列が歪んだような錯覚に陥る。
■鉄道と簡易軌道なき後は……バスで決まり!!
鉄道・簡易軌道ともに、奥行臼を通るレールを使った交通手段は全て廃止になって久しい。現在どうなっているかと言えば、バスの停留所が2箇所にある。
一つは別海町生活バス上風連線(現在は“連”と書く)のバス停で、JR奥行臼駅跡の近くに置かれている。バス停名称は「奥行」だ。
このバスの経路を確認すると、別海村営軌道上風蓮線をトレースするような経路を進み、廃線探訪+乗りバス趣味の目線で見ると大変興味深い。
ただし、朝と夕方に1往復ずつしかバスの便がなく、実際利用するにはかなり狭き門かもしれない。
もう一つの停留所は、簡易軌道の遺構から300mほど離れた国道243号線上にあり、こちらは根室交通の中標津線と中標津空港線の2路線が通る。こちらの名称も「奥行」。
これらバスを使って見に行けるかどうか。まずJR厚床駅〜中標津バスターミナルを結ぶ、中標津線の時刻表を見ると……
……本数が少なく、一方通行ルート/来た道を戻るルートいずれも、現地での持ち時間が膨大になってしまい多少ハードルが高い。
根室〜中標津空港の連絡バスである中標津空港線のほうを利用した場合、1日4往復ながらも便によっては奥行で途中下車して、ほどよい見学時間を設けて回れる、比較的使いやすいダイヤ設定になっている。
なお根室交通中標津線は、JR旧標津線の代替バスとしての役割も担っていたが、2023年9月30日をもって廃止が決定している。以降、簡易軌道をバスで見に行くには、空港連絡バスが唯一のアクセス手段となる。
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