ここで紹介する、このELEC CITY TOWN。すでにバスイベントなどでお目にかかった人もいるかと思われるが、Hyundai Motor Company製の電気路線バスだ。
日本ではすでに、電気バスは中国製や国産レトロフィットなどが走っており、“紙のバスマガジン”でも試乗インプレッション記事を紹介した、いすゞエルガEVも絶賛発売中だ。
そんな中でついに試乗取材が実現したわけだが、いくらユニバースで実績を積んできたHyundaiとはいえ、正直なところ後発感が否めない。しかしそんな「?」をブッちぎる解答がこの試乗取材で確実に見えてきた!!
(記事の内容は、2024年9月現在のものです)
執筆/近田 茂 写真/伊藤嘉啓
※2024年9月発売《バスマガジンvol.126》『「ELEC CITY TOWN」コイツにガッツリと試乗してきた!!』より
■この絶妙なサイズのEVが日本市場に新風を巻き起こす!!
日本市場への参入にユニバースで成功を収めたヒョンデ。国内事業社のニーズに対応し、レスポンス良く改善努力を重ねた結果、一定の評価と侮れない人気を獲得したことはすでによく知られている。
そんな中さらに次なる刺客として準備されたのが、今回のエレクシティタウンだ。名前からもわかる通り、次代の路線バスとして日本市場へ新規参入を果たす注目の1台に独占試乗した。
本国では2017年から販売がスタート。2020年から普及が進み2023年のデータによると既に路線バスの約6割がBEVになっている。
しかも小型(マイクロバス)の7mから大型の11mまで、さらに連節バス、そして観光系まで充実のフルラインナップを誇るのはヒョンデだけ。FCVも含めて電動系バスの普及浸透は、明らかに日本よりも先行しているのである。
今回日本国内への導入にあたり全国的にニーズがあるにも関わらず、国産バスのラインナップから姿を消してしまっている9mクラスの路線バスにターゲットを絞り、日本仕様が新開発された。
もちろん需要調査では都市部で活用される11mが主力であることは承知の上だが、地方では9mクラスを望む強い声がある。内燃や電動に関わらずそのクラスの欠如に呼応して今回の導入を決定。
すでにヒョンデは電動系バスにフルラインナップを持っている強みを活かし、将来的にはさらなる市場拡大を図りたいという。
韓国内はもちろん、グローバルな市場展開という実績で強みを持つ同社だけに、日本市場への参入にも注目されることは間違いなく、既にいわさきグループにより屋久島へ5台の導入が確定、去る7月に導入の基本合意が締結されている。
基本的には2023年2月に追加投入された9m本国仕様をベースに右ハンドル化。日本のレギュレーションに則った改造が施され、もちろん充電方式は国内標準のCHAdeMO急速充電器に対応。
ルーフに搭載されるバッテリーの基本は230kWhのリチウムイオン(並列3パック)だが、国内仕様は2パラで搭載。140kWのモーターを駆動し200km以上の航続距離が確保されたそう。
ヒョンデ社の国内導入1号機となるだけに、事前実走行テストも含めてかなり力の入った上質な仕上げを誇っているのである。
■EVならではの“音”も静かで優しい運行運転が楽にできる
試乗車は、量産化直前の試作車両。日本向けへの最終的な調整作業と確認を行うべく、国内での実走テストを徹底的に繰り返してきたと言う。展示会へ出展もされたので、どこかで見かけたことがある人も多いかもしれない。
グリーンのバスは背が高く、角の丸い優しいフォルムと2枚ガラスを採用したフロントマスクなどが新鮮。一瞬観光系かと見間違うなかなか優美なデザインだが、ノンステップの低床フラットフロアを持つ路線バスである。
前ドアから乗り込むとフラットなフロアが広がり、いわゆる中型路線車からイメージされる物より格段の広さ感を覚える。車幅が約2.5mあるだけに流石にゆとりがるわけだ。
試乗は「みなとみらい」周辺の一般公道で路線バス運行を模して行った。駐車車両や勾配の登降坂など色々と試してみた。
ハイバックシートの運転席に座ると、ステアリングホイールや計器板などには、ユニバースと共通部品が見られ、既に慣れ親しんだ感覚も。フロア右側には、エアツールが使えるソケットが標準装備されている親切な配慮も同じである。
運転操作はEV系一連の物で、通常はDかR(前進か後退)を選んでサイドブレーキを解除すれば、右足の2ペダルで全て賄える。インプレ記事を執筆する身にとっては、触れる(注視すべき)要素がどんどん少なくなるが、今回まず一番に驚かされたのは、車内騒音の静かさである。
内燃機車と違って電動車が静かなのはすでに周知されていることだが、それだけに些細な音も気になりやすい。制御系やモーターの唸り音などが結構耳障りだったりするものだが、今回はすべてにおいてとても静かであった。
発進加速のトルクは充分な太さで至ってスムーズに加速できるのが良い。バスのドライバーなら車内事故を起こさないように極めて穏やかな運転に努めるわけだが、そんな優しい扱いが楽にできてしまう。
ブレーキの扱いも同様で停止時のショックを和らげる操作がしやすかった。車両感覚も把握しやすく、ワイドな車幅がネガに感じられるシーンが無かった点も好印象であった。
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