■春日大社
シカを横目に階段を上がっていくと南門が見えてきた。ここが春日大社の回廊である。春日大社は神山である御蓋山(春日山)の麓に、奈良時代の768年に称徳天皇の勅命によりの御本殿が造営され、御本社(大宮)として整備された。主祭神は武甕槌命、経津主命、天児屋根命、比売神で、総称である春日神とされている。
全国に約3000社ある春日神社の総本社であり、1998年にはユネスコの世界遺産に「古都奈良の文化財」の1つとして登録されている。社殿は春日造といわれ、切妻造・妻入であり、屋根には大社造同様の優美な曲線を造りだしている。また20年に一度、社殿を美しくする「式年造替」が行われている。
造りかえるというと伊勢神宮の「式年遷宮」をイメージするが、伊勢神宮の式年遷宮が隣の敷地に同じものを造り、遷すのに比べ、この春日大社の「式年造替」は場所はそのままで建て替え・修復を行い、御神宝の新調を行う。創建以来ほぼ毎回行われており、回数として60回を越えるのは「伊勢神宮」と「春日大社」のみである。
主祭神の一柱である天児屋根命(アメノコヤネノミコト)は、天照御大神が御隠れになった天岩戸事件の際に日本で初めて祝詞を読んだ、言霊や言葉の神様として崇敬されている。気の利いた美しい表現の言葉を必要としている方は参拝してみてはいかがだろうか。
■御シカ様優先!
参拝を終え階段を下りていくと、国宝殿の前には観光バスが駐車可能な駐車場が整備されており、その横に奈良交通の「春日大社本殿」バス停がある。
まだ出発まで時間があるようだったので駐車場の様子を眺めていたが、インバウンドの影響で外国人観光客も多いからなのか、見たことのないカラーリングと、ツアー名表示が英数字で表記された観光バスがずらりと並んでいた。
当然だが県外ナンバーも多く、全国各地から奈良へ向かってきているのを実感した。出発時間が近くなった頃、駐車場からバスが入線してきた。バス停で待っていた人たちが涼を求めるように次々と乗車していく。定刻でバスは出発し、公園内の道路を縫うように走っていく。
対向車線を行く自動車や観光バスは多く、横を観光客が歩いているので、それぞれに注意を払いながら走行していく。道路端にいるシカも避けつつ無事降車するバス停に到着した。ちなみにシカについては、シカ優先となるので道路を横断している時は、渡り切るまで待たなくてはいけない。よってシカのペースに合わせて待機するしかない。
■東大寺
着いたのは奈良公園に西端にあたる場所で北に参道を歩いていくと、こちらも世界遺産の東大寺である。東大寺も歴史の教科書にも出てくる有名な寺院だ。
一般的に東大寺と呼んでいるが、華厳宗大本山である寺で正式には金光明四天王護国之寺(こんこうみょうしてんのうごこくのてら)であり、奈良時代に聖武天皇が建立した寺院である。
なんといっても特徴的なのは内部に置かれた大仏殿だろう。ただ現在に至るまで何度も修復を受けており当時から残っているのは台座の一部のみとなっている。また大仏殿自体も再建を受ける際に規模が縮小されたことがあり、建立されたそのままというわけではない。
それでも像高約14.7mという大仏は、見る者を圧倒する。そして春日大社と同じく1998年にはユネスコの世界遺産に「古都奈良の文化財」の1つとして登録されている。
大仏殿手前の参道に堂々とそびえる南大門は鎌倉時代に再建されたものでこちらは国宝指定だ。シカと戯れるのも良いが、遥か昔からここに建つ建造物もしっかりと見学したい。
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