長崎市は持続可能な公共交通網の構築を目指して、長崎市公共交通活性化協議会において、長崎市地域公共交通計画策定に向けた取り組みを進めている。
このような長崎市の取り組みと連携し路線バス網の維持に向けた協力体制を構築するため、長崎自動車(長崎バス)と長崎県交通局(県営バス)が連携協定を締結した。かなり踏み込んだ内容だが、どこまで連携していくのか、内容を紹介する。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
【画像ギャラリー】長崎県営バスと長崎バスが独禁法特例法を活用して連携協定
連携を行う背景は?
全国的に路線バスの利用者はコロナ禍の行動変容等により著しく減少しているのは長崎に限ったことではない。もとから沿線人口の減少が続いていた長崎市域においても例外ではなくバス事業者はかつて経験したことがない極めて厳しい環境下にある。
さらにアフターコロナでも長崎市域では、2035年までに路線バスの利用者が50%以上減少(2019年度比)すると試算されており、このままでは近い将来に長崎市域の路線バス網を維持できなくなることが予想される。
そのような事態を回避すべく、長崎市域の路線バス網の維持に向けて両社局は協力体制を構築することになった。
協定の内容は?
気になる連携協定の概要は次の3項目に大別される。「長崎市が策定する長崎市地域公共交通計画の基本方針に照らし、長崎市域の路線バス網の維持に向けて協力体制を構築する」「長崎市及び長崎市公共交通活性化協議会と緊密に連携して適切に取り組む」「本協定締結後、独占禁止法特例法第3章に基づく新たな事業者連携の仕組(共同経営)の導入について検討する」
「地域における一般乗合旅客自動車運送事業及び銀行業に係る基盤的なサービスの提供の維持を図るための私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の特例に関する法律」という長い名称が上記の特例法のことである。
法律名のとおり、地方のバス事業者と銀行は経営を維持するために経営統合や共同経営を推進して体力や競争力を高めたいところではあるが、これらは制限的競争になりうるものとして独占禁止法で禁じられている。
しかし、そうはいっても何もせずに経営ができなくなっては地域の公共交通網は破綻してしまう。そこで昨年に特例法が制定され、ごく簡単に説明すると国土交通大臣の認可により経営統合したり、共同経営(カルテル)を結んでも独禁法を適用しない例外とするものである。