2021年夏の富士急ハイランドとその周辺はなかなか攻めてきた感がある。バスファンの皆様は「当然」往復高速バスだろうが、現地での電気バスや遊覧船、ロープウェイのも是非お乗りいただきたい。
たっぷりとリニューアルされた富士急ハイランドでは取材できた唯一の「静かな恐怖」施設をレポートする。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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まずは恒例の社長から!
夏の富士急ハイランド新施設内覧会では、必ず登場して説明を行う富士急行の堀内社長。記者は同氏のファンである。毎回涼しい顔をしながらまじめに、とんでもないことを言ってのける社長のトークを楽しみにしている。
2020年は新型コロナウイルス感染症のまん延で登壇機会がなかったが、今年は何を言い出すのか楽しみだった。
今年のハイライトはなんといっても「FUJIYAMAタワー」だ。絶景展望フロア『FUJIYAMA スカイデッキ』とスカイウォーク型アクティビティ『FUJIYAMA ウォーク』だ。
後述するがFUJIYAMAウォークは恐怖との闘いだ。堀内社長は新施設は必ず自分が最初に試乗して確かめるのがモットーである。
しかしながら「少しでもリスクのあるものは乗らない主義でして……。ですからFUJIYAMAウォークは体験しておりません。体験してないものを皆様にどうぞとはいえませんので、私はFUJIYAMウォークだけはお勧めしません!」と言ってのけたのである。
その代わりに息子さんを犠牲にして行かせたとのことだが、その感想は「さわやかに怖い」だったそうで、堀内社長もそれを引用して「そういうことです」とだけ静かに語った。そう言われるとさらに恐怖感が増してくる。
「FUJIYAMAタワー」は静かな恐怖!
「FUJIYAMAタワー」は7月21日にオープン。『FUJIYAMA スカイデッキ』は展望台なので富士山や青木ヶ原樹海をバックに雄大な風景が広がり撮影スポットとして大人気になりそうだ。
もともとはジェットコースターFUJIYAMの点検用メインテナンス施設だったものを展望台にしてしまったので、目の前を最低速(約10km/h)になったFUJIYAMAが通過する。
文字通り目の前なので、FUJIYAMA搭乗客と展望台にいる客の目が合うほどだ。しかしコースター側がその数秒後には奈落の底に突き落とされる急降下が待っているので、手を振る展望台のお客さんに油断をしているととんでもないことになる。
展望台そのものに恐怖や絶叫はない。絶叫しているのはコースターの搭乗客と下から聞こえる徒歩客だけだ。
『FUJIYAMA ウォーク』は展望台の下をぐるっと一周歩くだけのアトラクションだが、絶叫徒歩客とはまさにこの歩行者である。2本のハーネスを付けた人は最初は手すりに従って鉄板の上を歩いていく。そのうちに手すりがなくなり鉄板だけになる。
さらにその鉄板も所々になり間隔が開いている場所もあり、勾配が出現する。上りがあれば下りもあるわけで、標高50m超えの場所で手すりもなく細い鉄板上を上るのと下るのとではどちらが怖いか。最終ターンを回ると鉄板の幅が1/3ほどになり足がすくむ。
ちなみにハーネスは天井のレールに沿って動いているので、足がすくもうが止まってしまおうが後続の人は追い抜くことはできない。よってあまりに遅ければ「あおり歩行」を食らうのでそこも恐怖であり、結局は自分自身の勇気と足に頼るしかないのである。
非常時はハーネスレールは複線になってるので、もう1本のレールを伝ってレスキュー隊が救助に向かうことになっている。
この様子を開業前に富士急行の特別な許可を得て撮影しているので、動画でご覧いただきたい。