鹿児島市交通局が市営バスの現状を知ってもらうため、全路線の営業係数を公表した。同局では市営バスの事業継続が可能となるように経営改善を図るため、事業規模を縮小する自動車運送事業の抜本的見直しに取り組んでおり、2020年から21年にかけて20路線を民間事業者に移譲した。
それでも新型コロナウイルス感染症の影響により利用者数が大幅に減少し、大変厳しい経営状況が続いていることから営業係数の公表に至ったようだ。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
【画像ギャラリー】ギリギリでも公共交通の意地がある!! 鹿児島市交通局が公開した全路線バス営業係数リスト(7枚)画像ギャラリーそもそもバスの営業係数とは?
「営業係数」という用語が多用されたのは日本国有鉄道(国鉄)が現在のJRに分割民営化される過程において特定地方交通線として廃止路線候補にリストアップしたころだ。リストアップされたほとんどの路線は九州や北海道の炭鉱路線だったが、手の施しようがない赤字路線の象徴としてニュースをにぎわせた。
営業係数とは100円の営業収入を得るためにどれくらいの経費が掛かったかを表す数値で、当然だが100を下回れば黒字、上回れば赤字となる。前述した国鉄の特定地方交通線のうち福岡県にあった添田線は営業係数が3800を超え、何をどうやっても赤字は解消できないという印象を植え付けた。
鹿児島市交通局が公表した営業係数を見ると2020年度は全ての路線が赤字で、うち75%は営業係数が200を超え、これは100円の収入を得るために200円以上の経費が必要な状況だ。
その中でも、14番谷山線、17番宇宿線、27番県庁・与次郎線、51番薩摩団地線の4路線は100円の収入を得るために400円以上の経費が必要な大変厳しい経営状況だと言える。
現在では鉄道・バスを含めて営業係数を公表する事業者は多くない。しかし鹿児島市交通局が営業係数公表に踏み切ったのは、市民の足を守るために機会があれば少しでも利用してほしいという切実な願いを可視化する一つの方法であると考えられる。
鉄道とは経費の要素は異なるものの…
鉄道が廃止されるとたいていはバス転換になるが、鉄道の利用者が伸びないままバスに転換しても利用者が多くなるわけではなく転換バスも廃止されてしまうケースも多い。鉄道は線路も駅も鉄道事業者が維持管理しなければならず、運転士を養成するにも莫大な費用が掛かる。
一方でバスは道路や信号の維持管理は国や自治体が行うので保線の必要はなく極端な話だが車両だけを管理すればよい。運転士も大型二種免許を取得する費用は鉄道のそれ(動力車操縦者運転免許)よりも費用ははるかに少なくて済む。
鉄道のメリットは1度の運行でバスとは比較にならないほどの大量輸送ができることだが、そもそも利用者が少なければスケールメリットはないに等しい。