■バスや鉄道との関連性は薄いが…
西鉄が行う主要事業であるバスや鉄道とは直接の関係はないし、日本人が利用することもできないサービスなので、交通利用者にはあまり関係がない事業に見える。ところで日本で生活する在住外国人はオンラインの時代にどのようにコミュニティを作っているのだろうか。
慣れない外国で生活をするのに地域や行政サービス等の生活情報は観光情報よりも重要で必要なものだ。少し古い資料だが2020年の福岡県における国籍別在留外国人で最も多い国籍は中国で20393人、次いでベトナムが18047人、韓国15194人と続く。
市区町村別のすべての国籍における在留外国人は福岡市が39118人、北九州市が13827人、次いで久留米市が4342人と続く。在留資格別では留学が最も多く18181人、永住者が14480人、技能実習が14354人、特別永住者が11463人と続く。
例えば中国人のコミュニティでは中国のSNSであるウェイボーには日本に関するコミュニティがあり、中国版インスタグラムである緑洲や動画SNSである快手にも同様に日本在住の中国人が多くのコンテンツをアップしている。
一方、ベトナム人はベトナム版のFacebookやLINE的な扱いであるZaloにコミュニティがある。これらのSNSには先に日本に在住しているいわば先輩在留者が積極的に日本での生活情報や観光情報を発信しており、オンラインでアドバイスのやり取りもできる。
もっとも日本人にはほとんど目につかないSNSのために、犯罪行為の連絡に使用されたこともあり実際に摘発を受けているケースもある。善し悪しはともかく、こうした国籍別在留者の生活情報はその国に特化した、あるいは最も利用されているSNSを通じて情報交換されているのが現状だ。
■在留地に特化したSNSというべきか?
西鉄が行おうとしているこの事業は、国籍ではなく在留地(主に福岡県)に特化したSNSとも言え、サービスの概要を見ればその目的が垣間見える。
このサービスは、在留外国人向けプラットフォームであり提供するサービスは、生活に必要な情報の提供としてビザ発行の手続き、不動産知識、就活プロセス、日本の文化など、生活における必須知識の提供および共有。
在留外国人向けサービスの提供として不動産、家具家電レンタル事業者と提携し、在留外国人向けサービスをシームレスに提供。イベント情報の提供として日本人や同じ国籍の人々と交流できるイベントや多様なコミュニティイベント、文化、祭りなどの情報を提供。
グループチャットの提供として在留外国人同士が相談や雑談ができる機能の提供し、居住地域別、趣味別の多様なグループを作ってコミュニケーションが可能としている。その半面、サービス対象者を「日本在住および日本在住予定の外国人」と限定しており、地域に住む日本人は排除されている印象は否めない。
もっとも、サービスの内容を見る限りは生活に必要なサービスをワンストップで提供するように感じるので仕方がないところなのかもしれない。しかし理想像は日本人も外国人も関係なく、在留者であれば地域社会の一員として共生することだろう。
果たして外国人だけのオンラインコミュニティーで地域に馴染んで日本人も外国人も意識しない地域社会になるかどうかは、今後のサービス利用状況を見て地域社会が判断することになるだろう。
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