外観を見ただけで路線バスの車種を言い当てるのは、普通乗用車よりも難易度が高い気がする。しかし中には、発売元が違うにも関わらず、バスファンにすら区別の付かない車がある。
文・写真(特記以外):中山修一
(ドッペルゲンガーな路線バス車両の写真付きフルサイズ版はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■瓜二つなバスの時代
本当に区別の付かない路線バス車両……いつ頃のモデルなのかと言えば、2025年2月現在も各メーカーのカタログに掲載されている現行車である。
現行の路線バス車両を製造・発売している日本の主要ブランドに、三菱ふそう、いすゞ自動車、日野自動車の3社が挙げられる。
まず、三菱ふそうが製造している路線車「エアロスター」に関しては、日頃バスを観察してちょっと慣れてくれば、すぐに三菱の車だと外見から判断できるようになるハズだ。
■2大ブランドによる同じ顔の車
今回のトピックに上がるのが、いすゞと日野の路線車。この2社では、車体のサイズごとに以下の車種を発売している。
【大型路線車】
・いすゞエルガ
・日野ブルーリボン
※ハイブリッド含む
【中型路線車】
・いすゞエルガミオ
・日野レインボー
【連節バス】
・いすゞエルガデュオ
・日野ブルーリボン ハイブリッド連節バス
「エルガ vs. ブルーリボン」、「エルガミオ vs. レインボー」、「エルガデュオ vs. ブルーリボン連節」の要領で、各クラスの車種を見比べてみると、双方とも殆ど同じ形をしていて、どの辺が違うの? と頭の中がハテナマークで埋め尽くされるかも。
それもそのはず、これら各クラスの車はブランドこそ違えど、標準仕様であれば同じ車体デザイン・同じ顔で、バスファンにすら区別が付かないほどのドッペルゲンガーなのだ。
■ドッペルゲンガーが生まれたワケ
では、どうしてブランドやペットネームが異なるのに、外見や仕様が一緒のドッペルゲンガーなバス車両が存在するのか。
これにはごく単純なカラクリがあって、いすゞ製も日野製も、車両本体を同じメーカーで製造しているためだ。
現在のいすゞ/日野の路線バス車両は、各発売元ブランドがそれぞれ別々に持っている工場ではなく、「ジェイ・バス」というメーカーが一括して生産を受け持っている。
ジェイ・バスは日本向け各種バス車両の製造メーカーで、いすゞと日野のバス製造部門が経営統合したのに合わせ、2002年10月に設立された。石川県小松市に本社がある。
車両本体の製造をはじめ、バスボディの設計や特装車の製作、事故車の修理、廃バス再生ほか、バスに関する様々なニーズに対応している。路線車の生産は宇都宮工場が担当。
ジェイ・バス誕生により、バス製造部門はいすゞ/日野ともに同じ会社となった。現在のところ、主に効率の関係と思われるが、各発売元(いすゞ/日野)向けに個別のバス車両開発は行っておらず、共通設計の車を各クラスごとに1種類ずつ用意、いすゞ/日野それぞれブランドとペットネームだけ変えて発売している。
■車種不明ならこの呼び方で!
バスファン的には、エルガとブルーリボンをどうにかして見分けようと頑張ってみることがある。最も簡単なのは、車体の前後にメーカー名やペットネームのステッカーが貼ってあるケース。ただし全部のジェイ・バス車に当てはまるとは言えないのが難点。
そうなると、使用しているバス会社が付けた車両番号から読み解いたり、「このバス会社は昔から日野自動車を好みで使っているからブルーリボン」と言った憶測に基づいたり……
……はたまた車内前方に取り付けてある名板(コーションプレート)をチラ見して、いすゞ/日野を判断したりと、針穴を通すようにプロファイルを洗い出していくのが作戦であり、楽しみ方でもある。どうしても区別が付かない時は、「ジェイ・バス系」と表現するのが定石か。
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