■所要時間と運賃比較
終点の神姫バス神戸三宮バスターミナルには約5分ほど早着した。ここはJR神戸線の高架下を利用したスペースとなっており、バスは向きを変え係員の誘導の下でバックで入る。高架下は縦列で2台置けるようになっており、その間に作られた歩道を歩いて乗降が行われる。
到着したバスは奥までバックして降車となった。運賃は1000円である。乗り換えなしで座席定員という内容でこの運賃はなかなかリーズナブルでありがたいと感じた。ちなみに万博会場から三宮までを他のルートで調べてみると、JR桜島駅からだと西九条、大阪を経由するルートで約45分とほぼ同時間で到着できる。運賃は660円だがJR桜島駅までのシャトルバスの運賃が必要なので350円を加えると1010円だ。
また東ゲートから大阪メトロ中央線を使うルートでは同じく西九条、大阪を経由するルートで約1時間、運賃は大阪メトロの380円とJRの660円で合計1040円だ。実はバスと大きな差はなく、乗り換えなしで座って行けるのは魅力でしかない。往路ならまだしも、1日会場内を歩いて疲れがある状態での復路にバス利用は特に魅力的だ。
■神姫バス神戸三宮バスターミナル
筆者は次のバスを待つ間、バスターミナルを見て周った。高架下というスペースもあるためか、待合室はあるものの柱が多く、広いスペースという感じではなかった。さらにそこにいくつものバスに乗車するための列が作られており、行き来が少々大変そうでもあった。
これは本来ならバス停の位置に列ができればいいのだが、バスがバックで行き来するため安全上の理由から改札案内があるまで待合室で並んで待機することになっているためである。発車案内板には発車時刻と行き先は表示されているが、どこの乗り場から出発するのかについては、発車時刻の10分前にならないと表示されないようになっている。
空いたホームに配車するからなのだろうが、その表示が出たら係員の誘導やアナウンスによってはじめてバスに移動できるというシステムだ。そして大阪・関西万博会場に向かうEXPO号はまた別に導線が作られており、間違えないように丁寧に看板も設置されていた。
外に出てみると行き交うバスは多い。先ほど乗車したバスはバックで入っていったが、この前は専用区画というわけではなく道路となっているため、バス以外の自動車も走行する。そのためすばやくバスをホームに入れる必要があるため、誘導作業はとてもてきぱきとしており、次々とバスが高架下へと吸い込まれていった。
また到着したバスに対しては係員が番号のボードを示して誘導を行っていて、どこでバスを向ければいいか分かりやすいようになっていた。
■本来は往路だけど復路で万博会場へ!
そして今度は夢洲交通第1ターミナル行きのバスに乗車するため待機列に並ぶ。もう午後の遅い時間ということもあり、並ぶ人はそれほど多くないようだ。しばらくすると案内のアナウンスが流れバスへと向かって歩き出した。
乗り場は11番と出ていたので、かなり先なのかと思っていたが、このホームは手前から1番、2番と続くのが外側のホームで、奥にあたるホームは11番からの付番なので、一番手前の奥に停まっているバスということになる。再び乗車すると定刻となりバスは出発した。
ここからは来た道を戻るルートだ。ターミナルから三ノ宮駅に出てくると、万博会場では雨が本降りだったのが日差しが見えてくるほどに天気は回復していた。そんな中をハーバーハイウェイへと走行する。
湾岸線を降りるとまた大きな橋と大屋根リング、大阪・関西万博の会場が見えてきた。目をやるとまだまだ多くの来場者で賑わっている会場を見ることができた。右手に建設中の統合型リゾートといわれる大阪IRを、左には待機するタクシーの列が見えてきたら間もなく夢洲交通第1ターミナルだ。
夢洲交通第1ターミナルには10分ほど早着した。次々と降車していき筆者も運賃の1000円を支払った。これは大阪・関西万博に何度も行った人は違和感を感じるはずだ。それは、おそらくシャトルバスで来場する際にクレジットカードやネット決済等の、いわゆるキャッシュレスで乗車してきているはずだからだ。
にもかかわらず神姫バスについては交通系ICカードのほか、なんと現金での支払いにも対応している。アプリでの予約も事前決済も必要ないのだ。これは桜島駅からのシャトルバスを除き大阪市内や近郊地域を結ぶバスについては、万博協会がバス事業者と貸切契約をした上で事業者が貸切バスとして運行する形態だからだろうと推測される。
会場内の買い物を含め完全キャッシュレスをうたっていたように、バスの予約は「KANSAI MaaS」というアプリで行い、運賃は事前にキャッシュレスで決済を行っていたはずだ。きっと会期の終盤にはどの便も満席で、やむなく地下鉄を利用した人も多かっただろう。ただその枠に入っていないのが神姫バスだった。
アプリから予約できないのは不便な反面、予約が必要なシャトルバスは満席で発着地にかかわらず乗車できない状態だったので、予約不要な神姫バスのEXPO号は救世主だったのだ。つまり通常の高速路線バスと同じ扱いなので、万博協会との取り決めや貸切契約に縛られず利用状況に応じて増車し、続行便を出し、臨時便を設定することが可能だったのだ。
開幕当初EXPO神戸号は往路11便、復路14便だったが、利用が好調であったことから6月から毎月ダイヤ改正を行で増便され、最終的に22.5往復の45便まで増発した。また起点となる神戸三宮バスターミナルは第1便が出発する7時15分の前から人が並ぶようになり、車内も補助席まで使っているようだが、それでも乗車するまでに数時間かかるようになった。
よって時刻表にはない臨時便や続行便も設定される等、臨機応変な対応が行われた。利用者の立場に立ったことが好評の要因だろう。大阪の梅田発着便よりも遠い新大阪便の方が運賃が安いという摩訶不思議な設定だったが、バス事業者が勝手に運賃を変更したり増便したりという臨機応変な対応ができなかったのは前述の通り、貸切運行でがんじがらめにされていたからと推測できる。
この点で一般の高速路線バスとして高速車と運転士をあらんかぎり投入し、既存の決済方法で予約不要で乗車可能にした神姫バスは利用者目線では間違いなく勝ち組であると言えるだろう。










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