西日本鉄道(西鉄)は言うまでもなく鉄道会社だが、もはやバス会社としての方が有名だ。しかし子会社にはバス会社だけでなく鉄道会社もある。筑豊電気鉄道(筑豊電鉄)がそれだ。そしてその終点である筑豊直方駅は、JR直方駅とは離れているのでバスの便があるが、それはなぜで、そしてどんな様子なのか、を歴史を振り返りながら見ていきたい。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■実は筑豊地方はあまり通らない?
筑豊電鉄は北九州市八幡西区の黒崎駅前駅から直方市の筑豊直方駅までの16kmを走る。かつては西鉄北九州線(路面電車)と相互乗り入れをしていたことから、現在でも低床の路面電車タイプの連接車が用いられる。筑豊と名乗るが、筑豊地方である直方市を通過するのは全21駅中3駅のみだ。
黒崎駅前駅からは北九州市八幡西区を走り、途中で同社の本社所在地である中間市を通過し、再度、北九州市八幡西区に入り、ようやく直方市に入り終点の筑豊直方駅に至る。
筑豊の名がつくのは、かつては西鉄が直方市から飯塚市を経て福岡市まで路線を延長する壮大な計画を持ち、実際に免許を持っていたからだ。段階的に筑豊直方まで開業したが、残りの直方市から福岡市までの免許は昭和46年に営業廃止申請して失効している。
■その名残は筑豊直方駅の形状にあった
現在では乗客減少が続き、黒崎駅前駅から筑豊中間駅間の電車が多く、筑豊直方までの便は少ない。それでも駅としては通過型の2面2線を持ち、そのまま高架で先に延びるような形状になっているのがかつての名残だ。
また福岡市で西鉄大牟田線(現在の天神大牟田線)に接続するような計画もあったという。軌間はどちらも標準軌だが架線電圧がDC600ボルトと1500ボルトなので、実現していれば昇圧するか複電圧対応の電車が必要だっただろう。
これにより筑豊直方駅は直方市の中心部やJR直方駅からも遠く、歩けないことはないが西鉄バス筑豊の路線バスが本駅を経由することにより連絡の便を図っている。
このジレンマは現在でも筑豊電鉄の直方市内の集客低迷のネックになっており、高速バスを当駅経由にさせたり、途中駅でも福岡直結の高速バス「なかま号」を通谷電停に停車させたり、西鉄タクシーと連携して乗客の便を図る等の施策を実施した。
■バス停の名は筑鉄直方!!
筑豊直方駅を出ると目の前にバス停があり、停留所名は「筑鉄直方」だ。便数は多くなくJR直方駅とJR遠賀川駅を結ぶ路線が通る。
それとは別に構内ともいうべき、店舗や駐車場がある高架下にもポツンとバス停があり、屋根やベンチまである立派なものだが、ここには土曜日に1本だけ市内を循環する便が停車するだけだ。
直方市内のバスは使いにくく、JRの駅がある直方停留所からは博多行きのJR九州バスや天神行きの西鉄高速バス、西鉄黒崎バスセンター行きの急行バスが発着するが、筑鉄直方からはローカル線しか発着しないので筑豊電鉄から先の足は限られる。
かつては国鉄バスと西鉄が現在のJR九州バス直方本線と九州自動車道を組み合わせて博多駅と直方駅を結ぶ、西鉄が現在でも走らせる天神行きの高速バスとは別の路線を共同で展開していたが、乗客が伸びず後に廃止されている。
■同じ筑豊なのにちょっとややこしい……
同じ筑豊地方である飯塚市や田川市は八木山バイパス経由での福岡行き筑豊特急が頻繁に走るが、直方市からは八幡ICが近いことから高速バスで福岡に行くことになる。
小倉行きの特急バスもあったが廃止されてしまった。そして直方市と飯塚市を結ぶバスの便はない。よって直方市と飯塚市を結ぶ公共交通機関は筑豊本線のみで西鉄バス筑豊のテリトリー内でバス路線が分断されている。
かつての炭鉱路線であった鉄道のローカル線が一気に廃止に追い込まれ、バス転換されたバス路線までもが廃止され、人口も増えないままでは仕方がない面もあるが、それゆえに車社会が急速に進んでしまったのは北九州市と同じ構図だ。
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