民間が担ってきたこの国の地域公共交通……この事業モデルを果たして転換できるのか?

■「奇跡の市場」という宴の後

 つまり、日本では、バス事業が「民間のビジネスとして成立してしまった」のだ。ただし、戦後の復興期から、鉄道網の整備や自家用車の普及が経済成長に追いつくまでの、わずか20年余の間だけ。

 人口も減少し始め好条件が削げ落ち、まずはバスで、そして鉄道でも、民間ベースでの公共交通の維持が困難になりかけている。

 ところで、歴史をさらにさかのぼると別の姿が見えてくる。

 この「ビジネスとしての公共交通」モデルの第一号は、よく言われるように阪急の小林一三だ。戦後、乗合バス事業者らは、阪急モデルをまねて各地に「ミニ阪急」を作りあげた。

 しかし、鉄道やバス路線という「線」を引き沿線人口を増やし、小売業などを展開しグループ全体で利益を上げるというビジネスモデルを、現代に当てはめるとどうなるか。

 インターネットという「線」を手始めに拡大したITベンチャー達と、実は共通しているではないか。小林一三や戦後のバス事業者の経営者らは、S・ジョブズや孫正義の先達だったのだ。

 その後、本業も副業も大いに儲かった時代、安定して「親方日の丸」化した時代、さらに本業が赤字化すると「単なる金儲けとは違う」と自画像を描き換えていったバス事業者らも、元は一獲千金のベンチャーであった。

 もちろん、残念ながら今のバス、鉄道で一獲千金は狙えない。公的な資金を安定して投入してもらう仕組みが求められている。しかし、いやだからこそ、保守的な社風を打ち破り、全く新しいスキームを構築する力が、求められているはずだ。

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