最近の路線バス車両は単一のメーカーで製造しているが、その昔はシャシーとボディを別のメーカーが作ったりと、今とは異なる独特な作り方をするのが通例だった。
文・写真:中山修一
(トラディショナルさ際立つ現役路線バス車両の写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■上と下を別々に作っていた!?
1900年代初頭に生まれたバス車両といえば、バス専用設計ではなくトラックのシャーシをベースに、客室付きのボディを架装したものが大多数を占めていた。
そんなバスの構造的な関係からか、シャーシやエンジンなどの下回りを自動車メーカーが製造し、シャーシに載せる上回りはボディ製作の専門メーカー(コーチビルダー)が手がけ、最後に上と下を合わせて完成させる方法が一般化し、そのまま伝統的に続いた。
海外のバス車両を見ると、2025年現在も上下を別々に作る生産スタイルを採っているメーカーがある。日本の場合、路線バス車両へのバリアフリー対応が本格化した2000年代から、シャーシ/ボディを一つのメーカーで一括して製造する流れに軸足を少しずつ移していった。
すでに日本国内にバスのコーチビルダーが1社も存在しない状況もあって、上下別メーカー製の量産車は作られなくなって久しい。
■首都圏に健在!? コーチビルダーが手がけた路線バス
生産面では“絶滅”してしまった上下別のバス車両であるが、街中を走行している路線バスの車種に注目すると、2025年2月現在のところ、実は過去に製造された車がまだ現役で使われていたりする。
しかも、古いバス車両の締め出しが激しい東京や神奈川などの首都圏で、だ。
今日も製造・発売を続けているバスのメーカー/ブランドといえば、三菱ふそう、日野、いすゞの3社が有名であるが、年代を少し遡ると、日産ディーゼルが大型路線バス車両を発売していたことがあった。
日産製の路線バス車両は、上回りを別会社が手がける昔ながらの生産方法が採られていた。現在、首都圏の街中でも見られるのが、日産ディーゼル製のシャーシ「スペースランナー」に、コーチビルダーの西日本車体工業が製作した「96MC」と呼ばれる車体を組み合わせたものだ。
■96MCという車体
西日本車体工業(通称:西工)による96MC車体が登場したのは、名称の通り1996年。既存車体のマイナーチェンジ版という位置付けだった。
基本的には日産ディーゼル製シャーシへ架装するための車体と言える。ただし専用ではなく、いすゞ製や三菱製の下回りに96MC車体を載せたバス車両も存在する。
前面バンパー部分に角目4灯ヘッドライトを埋め込んだデザインが外見上の特徴で、バス車両の中でも特に精悍な顔つきをした格好良さが魅力。
96MC車体には、2ドアの標準的な路線バス用をはじめ、高速道路での走行に対応した一般路線向けトップドア車や高速バス仕様など、目的に応じた幅広いラインナップが用意されていた。
どのタイプもバンパーにライトが埋め込まれたレイアウトで、ほぼ同じ“目つき”をしているため外見から割と簡単に96MCだと判断できる。
西日本車体工業は福岡県の小倉にあったコーチビルダーだ。同メーカーは地元エリアの西鉄と関わりが深かったため、福岡県へ行くと今も96MCを載せた西鉄バスの路線車を、本場とはこういうことか!! と痛感させられるほど高頻度で見かける。
分布的に、どちらかといえば西高東低型の傾向が強い96MC車体であるが、北から南まで一応全国的に使われており、首都圏の大手バス事業者にも導入例がたくさんある。
コメント
コメントの使い方