バスにおいて運転士と並ぶ職業といえば、バスガイドだ。一人前のガイドになるために、あるいはベテランのガイドになるために、乗務担当がない日でも訓練をしている。その模様をちょっとだけのぞいてみたのでレポートする。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
取材協力:富士急行・フジエクスプレス
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■ガイドに笛は不要なの?
今回は東京都港区のフジエクスプレス東京営業所を取材した。バスガイドの扱いも運転士と同様に事業者により異なることが多いので、あくまでも一例ということでご覧いただきたい。
フジエクスプレスは港区のコミュニティバスである「ちぃばす」をはじめとして各地への高速路線、そして貸切バスの運行もする。バスガイドの仕事は主に貸切バスでのガイド職であるという認識は間違いではない。
以前と比較してバスの誘導等の業務はハイテク化したバスにより少なくなってきた。昭和の世代ならば、ガイドは首からホイッスルをぶら下げていたのがデフォルトの記憶だろう。今はその必要はほとんどない。
主にバスがバックをする際にはガイドが後ろに回り、笛を吹いて誘導する光景は昔の観光バスの当然の姿だったが、今はバックカメラがあり、バスの後ろにもマイクが取り付けられガイドがしゃべると運転士に聞こえるようになっている。よって笛は持っているかもしれないが、基本的には不要なアイテムになってしまった。
■運転士は君だ車掌は僕だ?
同社のバスガイドの仕事にそれほど機会は多くないが、車掌業務がある。バスガイドは法的には車掌には違いないが、どういうことではなく鉄道の車掌のように本当にいわゆる車掌業務を行うのだ。
同社は富士急バスとともに中央道方向への高速バスを多く出しているが、人気路線のため続行便が出ることはよくある。しかし高速仕様車が手一杯の際には仕方がなく貸切車が出動するのだが、その際にはガイドが車掌として乗務して、改札や運賃収受、車内放送業務を行う。記者もその姿を目撃したことはないが、貸切車での続行便に当たるともしかしたらガイドが車掌として乗務しているかもしれない。
■座学は重要!
さて、ガイドが座学講習を受けているところにお邪魔した。基本的には自分で覚えるものだが、読み方やアクセント等の間違いがあってはならないので、テキストの読み合わせを定期的に行い指導ガイドがチェックする。
書架には同社オリジナルの秘伝の書がたっぷり詰め込まれており、全国の主要観光地とそこに至るルート上の案内が地域別に分冊になっている。これをもとに自分でルート図を作成し、どこに何が見えて、見どころは何なのかということから、ちょっとした豆知識に至るまでガイド個人のノートが財産になる。
■決まってはいないセリフ!
同じルートを走った場合、ガイドにより案内や表現が異なるようだ。これは先述の秘伝の書に書かれた内容を基礎として、ガイド個人のセリフにアレンジされるからだ。当日乗務する担当車両の乗客の層により興味や関心が異なることから、セリフや「つかみ」は変わる。
楽しく旅をしてもらうためには、エンターテイメント要素は必須であり、芸人ではないにせよ「つかみ」は重要なのだ。ウケ狙いというわけではないが、思い出に残る案内をするためには単なるアナウンサーであってはならない難しさがここにある。
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