ウィラーが運転士の呼称を「ハイウェイパイロット」に変更だと!? なんで?

ウィラーが運転士の呼称を「ハイウェイパイロット」に変更だと!? なんで?

 WILLER EXPRESS は、2024年4月より、高速バスの運転手を「ハイウェイパイロット」と呼称変更しているのはご存じだろうか。いったい何の意図で、どんな目的で変更したのだろうか。

文:古川智規(バスマガジン編集部)
(詳細写真は記事末尾の画像ギャラリーからご覧いただくか、写真付き記事はバスマガジンWEBまたはベストカーWEBでご覧ください)

■運転手がハイウェイパイロットになる?

ウィラーの高速バス
ウィラーの高速バス

 同社が明かす呼称変更の理由は次の通りだ。すなわち、「WILLER EXPRESS のハイウェイパイロット」という職業をブランド化し、「憧れの職業」「かっこいい仕事」として認知してもらい、ハイウェイパイロットを志す人材を増やすことを目指す。

 同時に、他業種からのジョブチェンジを希望する人々を支援する、ハイウェイパイロット専門研修施設を開設する。他業種で養った接客経験を活かしながら、安全に関する知識やスキルを習得し、「安全と接客の両立」を実践するハイウェイパイロットを育成する。

■「ハイウェイパイロット」に込めた思い

 続けて同社は呼称変更したハイウェイパイロットに込めた思いとして、「安全とおもてなしは表裏一体であり、相互に補完しあうものと捉えます。その思想に基づき、高速バス「WILLER EXPRESS」のハイウェイパイロットには「安全とサービスを両立したワンランク上の運転手」であることを求めています」

 「この理念を体現するハイウェイパイロットの姿勢が、今回の呼称変更を通じてお客様に届くことを期待しています。そして、バス運転手に対する「キツい」「長時間労働で、大変」「低賃金」といった暗いイメージを一新し、飛行機のパイロットのような「憧れの職業」「かっこいい仕事」として、ハイウェイパイロットを目指す仲間が増えればと考えています」としている。

■人手不足に対する取り組みが現実の課題

バリュースコアは乗車後アンケートより算出した「安全運転」「車内の清潔さ」「乗務員の対応」の総合平均点
バリュースコアは乗車後アンケートより算出した「安全運転」「車内の清潔さ」「乗務員の対応」の総合平均点

 現在、全国各地の多くのバス会社が人手不足により減便や路線の廃止といった課題に直面している。そうした減便が利便性の低下による利用者の離反を招き、収益悪化や運転手の採用難につながるという負のサイクルを生んでいる。さらに2024年問題がこの状況を一層深刻化させているのは周知のとおりだ。

 同社では収益改善により、今後3年をかけて段階的に平均年収600万円まで、給与を約20%引き上げる計画を進めているという。

 一方で運転士不足は現実のものだ。この人手不足に対処するため、他業種からのジョブチェンジを支援する新たな取り組みとして、若手新人パイロット育成に特化した研修施設を設立する。

 この施設では、大型自動車の運転経験はなく接客業などの経験がある方を中心に、集中的な育成プログラムを提供する。これまでに培った接客経験を活かしながら、安全に関する知識やスキルを習得し、「安全と接客を両立した」ハイウェイパイロットを育成する。現在、1期生として7名の入校が決定しており、中古車販売店や飲食店など、様々な業界からのチャレンジャーが参加しているという。

■高速専業ははたして有利なのか?

 ここからは記者のオピニオンだが、電鉄会社系のバス事業者は必ず路線バスがある。むしろそれがメインで収益性の高い高速バスは、路線バスを維持するための赤字補填路線という声がある。

 それでも収益が改善するのであれば高速路線を拡充して、赤字の路線バスを維持できていた。それも運転士不足と2024年問題でほぼ不可能になってしまった。運転士がいないので収益性の高い高速バスが増便できず、かといって路線バスを減便した運転士を高速バスに回す余裕もない八方ふさがりなのが現状だ。

 ある現役の高速バス運転士によると、ウィラーのような高速バス専業事業者や路線バスをいち早く廃止してほぼ高速専業に移行したジェイアール東海バスなどは、赤字になりやすい路線バスという足かせがないので、運転士不足なのは間違いないだろうが、まだ確保しやすい環境なのだそうだ。

 よって、呼称変更やジョブチェンジの支援等でまずは運転士を確保し、運転士の年収を上げていく計画があるだけ他の事業者よりは先を行っているのかもしれない。ハイウェイパイロットという職業名称が一般化し定着するかどうかは同社の今後にかかっているといっても過言ではないだろう。

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