この春、また惜しまれながらも三重交通の松阪熊野線が廃止された。昨年からニュースで多く報じられてきたが、3月31日の運行をもって廃止となった。そこで今回は3月に乗車した様子と、その最終便運行の模様をレポートする。
文/写真:東出真
編集:古川智規(バスマガジン編集部)
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■松阪熊野線とは?
出発は三重県松阪市である。改めてになるが、この「松阪熊野線」について紹介すると、三重県の中部の松阪市から南部にある熊野市を結ぶバスで、その距離は約135キロと本州では2番目に長い距離を誇る。
以前は「南紀特急バス」という名称で1970年より松阪~紀伊勝浦を結んでいたのだが、時代の変化により経路を変え、2018年10月1日からは「南紀特急バス」から「松阪熊野線」へと生まれ変わった。
特急バスの時代は経路上の停留所は少なかったが、リニューアルで停車が増え乗車機会が増えるとともに長距離路線バスの1つに仲間入りし話題になった。
■いすゞエルガの長距離路線仕様?
JR松阪駅前4番のりばが三交南紀行きのバス停である。以前は郊外にある「松阪中央総合病院」を起点としていたが、昨年秋のダイヤ改正により運行体系が大きく変わった。まず1日1往復に減便の上で平日のみの運行になった。さらに三交南紀からのバスは松阪駅前を経由し松阪中央病院まで向かうのだが、下り便は松阪駅前が起点になった。
以前の本数を思うと随分と寂しいダイヤだ。また南紀から来る場合は日帰り往復できるが、松阪からだと同路線での日帰りは不可能になった。きっぷ売り場で三交南紀までの切符を購入し待つと、待機場からバスが転回して入線してきた。
乗車するバスは以前と同じいすゞのエルガハイブリッド車で、車体側面には「熊野古道ライン」とラッピングされた専用車両になっている。車内は座席のハイバックシートが並び通常の路線バスとは異なり長距離路線仕様になっている。座席にはカップホルダーと網ポケット、一部座席にはUSBポートを備えているほか車内ではWi-Fiが利用できる高速車並みの設備だ。
■さみしい乗降
発車時刻となり、松阪駅前を出発した。以前乗車した時も感じたことであるが、乗車したのは数人と寂しい。既に3月末の廃止もニュースで流れており、別れを惜しむ乗客で増えているのではないかと予想したが、まだそんな雰囲気ではなかった。
松阪市内を走行するバスは国道42号線を南へと向かう。市街地の中から徐々に緑が見えるようになり田園風景が広がってくる。昔の三重電気鉄道松阪線・射和駅跡である射和(いざわ)バス停を過ぎると松阪市から多気町へ入る。
多気町内を走行しVISONに約10分の遅延で到着した。以前に乗車した際は乗客のほとんどが当地で下車したが、今回は平日のみの運行で時刻も15時すぎなので降車はあまりいなかった。そもそも乗車人数が少ないので乗降もほとんどなかった。
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