■ただ値上げをすればいいという話ではない
収益改善のために単純に値上げをしても国民はついてこないのは過去の国鉄の例で明らかだ。確かに国鉄とは事情は異なるが、事業者は数年前はコロナを理由に減便した。
ここまではよかったのだが、実際には乗務員不足の方が深刻だったはずだ。それを隠したわけではないのだろうが、コロナのせいにしてしまった。この時点で近い将来、深刻な問題になりアフターコロナでも減便や路線廃止が出てくることを説明すべきだった。
仮に運賃の値上げをしても乗務員不足はそう簡単には解決しない。なり手がいないからだ。免許取得費用を会社が負担しても採用できないのが現実だ。この点は事業者は全体的に甘く見ていた感がある。
であれば運賃の値上げは仕方がないとしても、どちらに転んでも赤字であるならば先に乗務員の待遇を大幅に改善して、その赤字分を将来の値上げした運賃収入で賄う方が乗務員になる人材が集まる可能性が高い。少子高齢化とはいえ労働力がないわけではないのだ。
■どこに支援するのか?
もはや親会社の鉄道会社ですら頼りにできないのであれば、国や地方自治体は経営のためではなく乗務員の待遇改善のために制度的、経済的な支援をする方が乗務員不足の解決に期待が持てる。
経営は株式会社なので事業者に頑張ってもらうしかないが、待遇改善で増える人件費や運行にともなう制度的費用を助成すれば事業者は待遇改善をしやすいはずだ。
これについても特定の事業者に税金が投入されることを嫌う向きもあろうが、それがために住民の足が奪われ、自動車という足がない通学や通院ができないことの方が問題だ。そんな原則論を語るのはナンセンスなほど事態は深刻である。
鉄道には上下分離方式という考え方があるが、バスでも車両を自治体所有に、使用者を事業者にして自由に運行させ、制度的には路線バスの自動車税や軽油引取税を減免する等の支援は法的な制度を整備すれば可能なはずだ。
■国民が意識改革をする必要があるとでも?
我々国民も運賃値上げや、国や自治体の助成をしばらくは黙って見つめる意識も必要だ。仮に路線が廃止されなくても減便で利便性が著しく低下すればバスという選択肢が頭から消える。
後になって乗務員不足の問題が解決して便数が回復しても、一度選択しなくなった交通機関をまた頻繁に利用することはない。結局はお決まりの「ご利用者数の低迷により…」廃止となるのは目に見えている。
すべての立場で支援や制度、あるいは直接の負担を容認すべき時が来たのだろう。しかしそれは永遠ではなく、一時的なものにしなければならないことは論を待たない。当の事業者も覚悟して利用者たる沿線住民と向き合わなければ見捨てられることになるのはバスに限らず鉄道も同様だろう。
【画像ギャラリー】さまざまな路線バス(5枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方