ひとつのバス事業者を掘り下げて紹介する、バスマガジンの名物コーナー。今回は2019年に遡って、9月発売号で掲載した、小田急バス編を振り返って紹介する。
(記事の内容は、2019年9月現在のものです)
1950年に誕生し、都区内西部から多摩地域、川崎市・横浜市にかけて路線を広げる小田急バス。会社概要や車両解説だけでは伝えきれない同社の特徴について、1.創立前史、2.シンボル、3.近年車両史、4.異色路線、5.コミュニティバスの5つの切り口で紹介する。
構成・執筆・写真/加藤佳一(B.J.エディターズ)
写真協力/(K)柏田芳敬、(H)編集部
※2019年9月発売「バスマガジンVol.97」より
【画像ギャラリー】小田急バスの路線風景と所有するバスを詳しく見る! バス会社潜入レポート 小田急バス編【一般路線車1】
■空港連絡バスは小田急バス本体 高速・貸切はシティバスが営業
●西生田
高速バスとしては、小田急バスが吉祥寺~羽田空港線、吉祥寺~成田空港線、新百合ヶ丘~羽田空港線、新百合ヶ丘・たまプラーザ~成田空港線を運行。
小田急シティバスが新宿~木更津線と夜行・季節便の、新宿~宿毛間「しまんとエクスプレス号」を運行している。
●調布飛行場
小田急バスが開業した夜行バスはすべて小田急シティバスに移管され、現在は新宿~秋田の「フローラ号」、新宿~岐阜の「パピヨン号」、新宿~岡山・倉敷方面の「ルミナス号」、新宿~福山・三原方面の「エトワールセト号」、東京~広島の「ニューブリーズ号」、新宿~高知の「ブルーメッツ号」を営業している。
一般貸切バスは02年、小田急バスから小田急シティバスに移管。同社は若葉台営業所を新設して神奈川県内の営業を行ったが、現在は世田谷営業所を拠点に都内と川崎市の一部をエリアとしている。
小田急バス本体はその後、契約貸切バスと特定バスを都内・神奈川県内の双方で営業している。
■小田急バス5つのポイント
ここで紹介する車両、路線は順に、
1.JR中央線より北側にあり路線エリアの最北端に近い桜堤団地
2.「きゅんた号」の1台で登戸営業所に配置されているE9257
3.登戸営業所で活躍した高出力車E7145と町田営業所の貸切→高速改造車2567
4.新宿駅西口をあとにする一日2本だけの「宿44」
5.武蔵境営業所が担当する三鷹市「みたかシティバス」と町田営業所が担当する町田市玉川学園地区「玉ちゃんバス」
となっている。
●Point01 小田急線から遠く離れたエリアにも路線
小田急バスの路線図を眺めていると、小田急線から遠く離れたJR中央線の各駅に多くの路線が発着していることに気づく。
小田急バスの前身は調布・三鷹を本拠に吉祥寺や武蔵境に路線を延ばしていた武蔵野乗合自動車。これが戦後、国際興業の傘下に入ったのち、自社直系のバス事業者を持っていなかった小田急電鉄に買収され、商号を小田急バスに変更したのだ。
鉄道事業者のバス部門として創業した多くの電鉄系バス事業者とは、まったく異なる歴史を持っている。
●Point02 小田急バスのシンボルは昔もいまも“犬”
小田急バスの創業時、バスの車体側面に銀色の犬のレリーフが取り付けられた。人に愛され、人のために働く犬の性格が、バスの使命と一致していることからシンボルマークに選ばれたのだ。
その後、路線車からは取り外されたが、2012年には犬をモチーフにしたマスコットキャラクター「きゅんた」が誕生。路線車の前頭部に貼付された。また吉祥寺・武蔵境・狛江・登戸・町田の営業所に各1台、それぞれデザインの異なる「きゅんた号」が配置されている。
●Point03 ひと昔前まで富士ボディを好んで架装
現在はノンステップバスが100%の小田急バス。ツーステップ時代は富士ボディの多い事業者だった。
路線車ではいすゞ製のほとんどが富士ボディ。丘陵地を走る生田(現・登戸)と町田には高出力仕様が配置されていたことも特徴だった。貸切車では三菱+富士ボディのハイデッカーも活躍。一部はワンマン改造され、空港連絡バスとして使用された。
それらが姿を消して10年が経とうとしているが、いまも地方の事業者で第二の活躍をしている姿が見られる。
●Point04 乗りバス派なら完乗したいレアな長距離路線
小田急バスにはいくつかの長距離系統がある。
第1位は全長21.42kmの新宿駅西口~よみうりランド間。昨年まで3~6月と9~11月の日祝日に2往復運行されていたが、今年から6月の日祝日に1往復という超レアな路線となった。
第2位は18.56kmの「宿44」新宿駅西口~武蔵境駅南口間。こちらは毎日運行されているものの、現在は一日2往復となかなか貴重な存在だ。
第3位は17.25kmの「渋26」渋谷駅~調布駅南口間。この路線については【その3】で詳しく紹介する。
●Point05 狭隘路を走るコミュニティバスがいっぱい
小田急バスでは住宅地を縫うように走るコミュニティバスを数多く受託運行している。
現在は三鷹市の「みたかシティバス」、武蔵野市の「ムーバス」、狛江市の「こまバス」、稲城市の「iバス」、町田市玉川学園地区の「玉ちゃんバス」を担当。いずれもオリジナルカラーの専用車両を使用しており、日野ポンチョが主力となった。
また三鷹市ではネコバスを連想させる黄色い中型バスが、三鷹駅と「三鷹の森ジブリ美術館」を結ぶ来館者の足となっている。