■手動運転時はその旨が表示される
ドア扱いは運転士の手動なので、運転だけが自動というのも電車のATOと似ている。客席側のモニターにも今何を検知してどのような条件で走行しているのかが、運転席のモニターと同じ情報が流れているので他の交通をどのように識別しているのかがわかる。
運転士は常にブレーキペダルに足をかけているし、ハンドルを触ってはいないがすぐにステアリングを取ることができるような体制で座っている。
運転士が何かの操作をすれば即座に手動運転に切り替わり、車内モニターに「手動運転中」の表示が出る。自動運転に戻る際にはボタンを押せば以降は自動で運転を続ける。ダイヤも入っていて、早着しても発車時刻になると音声で教えてくれる機能が備わっている。
■北口本宮冨士浅間神社
浅間神社前バス停で下車した。バスは勝手に通過はせず必ず停車する。降車ボタンを押せば運転士がドア扱いをするので、降車すればよい。次の便が回ってくるまで1時間あるので、北口本宮冨士浅間神社を参拝する。
浅間神社はコノハナサクヤヒメを主祭神とする富士信仰の神社だ。富士山周辺には多くの浅間神社があり、当社もその一つだ。長く荘厳な参道を歩くと神域に近づいている雰囲気満点だ。
手水を済ませて拝殿で参拝し、境内社にも参拝をしてから授与所に向かう。御朱印は当社と境内社2社、計3社分を授与してくれる。神札や御守、縁起物も多くの外国人観光客も物珍しそうに見ていた。
■自動運転の技術の高さはあと一歩で完成?
あっという間に1時間が経過して、次の便の自動運転バスがやってきた。ちょうど歩道に乗り上げる形で車道の邪魔にならないように作業車両がバス停直前に停車していたが、自動運転バスはうまく避けてバス停に停車した。
EV車は起動したときに最高トルクが発生するため、発進と加速は内燃車に比べて非常にパワフルだ。アクセルワークとブレーキングのプログラムはほぼ完ぺきでおかしなショックはない。通常運行している限りは技術的に完成されたように思えた。
ただし、他の交通の検知がシビアで、人の脳では判断できて回避できることが、自動運転ではまだまだで、急ブレーキになってしまう。すると着座していても体が投げ出されるので、立席での乗車は禁止されているわけだ。
無人での自動運転は高速バスの方が向いているのかもしれない。本実証実験での最高速度は35km/hに設定されているが、それでも速い方だろう。市街地のみの走行であれば特に問題は感じなかったが、郊外だと後ろが渋滞するので待避する場所を設けなければならない。
■市役所前で乗り継ぎ
市役所まで終点となり、興味津々で見ていた地元の方は運転席を凝視していたが、全員降車した。運転士の休憩時間もあり待機場所に回送するが、それは運転士が手動運転で行う。
回送経路までマッピングする時間的な余裕がなかったのと、回送を自動運転してしまうと駐車位置が変わると遅延につながるということで、今回は手動になったようだ。
自動運転の技術は運行場所によるマッピングや学習を積む必要はあるものの、すでに完成の域に達してはいるが、無人運転にはまだまだ時間が必要であろう。
回送して休息を取ったのちに、バスは再び市役所前から運行を開始した。記者は富士山駅最寄りの金鳥居公園前で下車する予定だが、外国人観光客が特に多い付近で、飛び入りの予約なし乗車があった。座席は空いているので係員が乗車を促すと外国人のグループで、行先は「神社」だと言っていた。やはり浅間神社は人気のスポットなのだ。
香港から来たというグループはそのまま乗り続けたが、途中で下車した記者に手を振って見送ってくれた。旅行中の彼らに神々の御神徳が授けられますように。
富士山駅まで戻った記者は16時29分発の高速バスで新宿に戻った。昼前から出発して夕方に戻る約半日のショートトリップで必要な交通費は往復の高速バスの運賃だけだった。自動運転バスは無料なので、うまく活用すれば短時間で内容の濃い富士吉田観光ができるだろう。
天候が悪く富士山は拝めなかったが、中央高速バスの往復運賃は安いのでまた来ればよい。実証実験は2月28日で終了するが、夏には富士スバルラインで富士山五合目まで自動運転バスで登山できることに期待したい。
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